第29話「危険負担」
2025年10月17日
スガヤのコラム ~札幌不動産売却の疑問点~ 第29話「危険負担」
こんにちは、センチュリー21 TRAD 札幌店の菅谷(スガヤ)です。
今回は、「危険負担(天災と不動産取引のリスク)」についてのコラムです。
近年、豪雨や地震などの異常気象が増えていますが、こうした自然災害は不動産取引にも影響を及ぼすことがあります。
たとえば、売買契約を締結した後、引き渡し前に落雷や水害などで建物が壊れたり流されたりしてしまうケースです。
このような場合、売主・買主のどちらにも責任がないまま、取引の対象である建物そのものが滅失してしまうことになります。
こうしたトラブルに関しては、2020年4月1日の民法改正以前と以後で取り扱いが大きく異なります。
旧民法では、契約が成立している以上、たとえ建物がなくなってしまっても、買主が代金を支払う義務があるとされていました。
これは「債権者主義」と呼ばれ、引き渡し前のリスクを買主が負うという考え方です。
しかし、実際の不動産取引の現場では、この考え方は現実的ではありません。
そのため、多くの売買契約書には特約が設けられ、天災地変などの不可抗力で物件が滅失・損傷した場合には、売主・買主双方の責任を問わず契約を解除できるようにしていました。
たとえば、建物が全壊して修復ができない場合や、修復に過大な費用・時間がかかる場合は、売主が受領済みの金額を無利息で返還して契約を解除する、という内容が一般的でした。
一方、軽微な損傷であれば、売主が修復を行ったうえで引き渡す、という対応が取られていました。
民法改正後は、こうした実務に近い形にルールが整理されました。
改正民法では、引き渡し前に目的物が滅失し、引き渡しが不可能になった場合、買主は代金の支払い義務を免れる、あるいは支払いを拒むことができるとされています。
これにより、法律と実際の取引慣行がようやく整合したといえるでしょう。
ただし、注意が必要なのは、これはあくまで「売主に責任がない場合」に限られるという点です。
売主には、引き渡しまでの間、善良なる管理者としての注意義務(善管注意義務)が課されています。
もし管理不足などにより建物が損壊した場合は、売主側に責任が生じます。
不動産取引では、こうしたリスクをあらかじめ想定し、契約内容を十分に確認しておくことが重要です。
自然災害の多い時代だからこそ、安心して引き渡しを迎えるために、売主も買主も細心の注意を払う必要があります。
不動産についてのご相談がございましたら、ぜひ『センチュリー21 TRAD 札幌店』へ!
※今回のイラストはChatGPTで生成しております。
(ご参考)危険負担(契約における)とは ※アットホーム不動産用語集より
