すがっち探検隊(続)第43話「潤夏」

2026年05月01日

こんにちは、 センチュリー21 TRAD 札幌店のすがっちです!

 

1ヶ月前のお話の続き。

第4話「夏呑
第3話「再夏
第2話「揺夏
第1話「春別

 

※このストーリー全体のタイトルは未定で、現時点では「春夏秋冬猫物語(仮)」としておきます。

宅建

ワインの夜、本音と役割

 

居酒屋を出た三匹は、静かな裏通りにあるイタリアンバーへと足を運んだ。

扉を開けると、柔らかな照明とワインの香り。
外の喧騒が嘘のように遠のく。

 

「……落ち着くね」

 

ミミがほっとしたように言う。

 

「こういう店、ちょっと背伸びしてる感じするな」


ハルが笑う。

サクラはメニューを見ながら、自然な手つきでワインを選んだ。

 

「今日はゆっくり話そう」

 

赤ワインとチーズが運ばれてくる。
グラスが静かに触れ合う音。

――大人の時間だった。

 

***

 

しばらく他愛のない話をしたあと、空気が少しだけ変わる。

 

「ミミの家のことだけど」

 

サクラが切り出す。

ミミは小さくうなずく。

 

「うん」

 

「売却が決まったら……東京には、あまり来なくなるよね」

 

その一言に、静かな余白が生まれる。

 

「……そうなると思う」

 

ミミの声はやわらかいけれど、確かだった。

ハルは何も言わず、ワインを一口飲む。

サクラの胸の奥で、感情が揺れる。

 

――少しだけ、嬉しいと思ってしまった。

 

ミミが遠くなる。
ハルとの距離が、変わるかもしれない。

でも――

 

(だめ。それは違う)

 

グラスを持つ手に、少しだけ力が入る。

親友の幸せを願う。それが自分の役割。

サクラはゆっくり顔を上げた。

 

「ちゃんといい形で売ろう」

 

まっすぐな声。

 

「ミミのために、ご家族のために」

 

ミミの目が少しだけ潤む。

 

「……ありがとう、サクラ」

 

***

 

ハルがふと口を開く。

「サクラの家って、不動産屋なんだよな?」

 

「うん。地元でずっとやってる小さい会社」

 

「すごいな」

 

サクラは少し照れたように笑う。

 

「私もたまに手伝ってたし……宅建も一応持ってる」

 

「え、プロじゃん」

 

でも、その表情はどこか誇らしげだった。

将来、継ぐかもしれない場所。
自分の居場所。

 

***

 

ミミが少し前のめりになる。

「ねえ、サクラ」

 

「ん?」

 

「お願いしたいんだけど……」

 

まっすぐな瞳。

 

「サクラのところにお願いするには、どうしたらいいの?」

 

サクラは一瞬だけ驚いたあと、静かにうなずいた。

 

「まずは“媒介契約”を結ぶことになるね」

 

「やっぱりそれだよね」

 

ミミは真剣な顔になる。

 

「3種類あるんだよね?」

 

「うん」

 

サクラは指を3本立てる。

 

「①専属専任媒介」
「②専任媒介」
「③一般媒介」

 

ハルも興味深そうに身を乗り出す。

 

「違いって?」

 

サクラは丁寧に言葉を選びながら話す。

 

「簡単に言うと、“どれだけ1社に任せるか”の違いかな」

 

「ふむ」

 

「専属専任は1社だけに完全に任せる形。自分で見つけた相手とも直接契約はできない」

 

「結構縛り強いな」

 

「その分、責任も重いし、本気で動く」

 

ミミはしっかり聞いている。

 

「専任媒介は1社だけど、自分で見つけた買主とは直接契約できる」

 

「なるほど」

 

「一般媒介は、複数の会社に同時に依頼できる」

 

ハルが言う。

 

「競争させる感じか」

 

「そう。でもね」

 

サクラは少しだけ優しく続ける。

 

「1社に任せた方が、戦略をしっかり組めるし、責任も明確になる」

 

ミミはゆっくりうなずく。

 

「じゃあ……」

 

少しだけ間を置いて。

 

「サクラに任せるなら、専任か専属専任がいいってこと?」

 

サクラはまっすぐミミを見る。

 

「うん。私ならそう提案する」

 

その瞬間。

ミミが言った。

 

「サクラにお願いしたい」

 

迷いのない声。

信頼そのものだった。

サクラの胸が、静かに締め付けられる。

――親友だからこそ、応えたい。

 

「……うん」

 

やわらかく微笑む。

 

「任せて」

 

***

 

ワインはゆっくりと減り、夜は深くなる。

ハルは二匹のやり取りを見ながら思う。

――すごいな、二人とも。

恋とかだけじゃない。
ちゃんと“未来”を見てる。

そして、その中に自分もいることを感じていた。

 

***

 

店を出ると、夜風が少しだけ涼しかった。

三匹は並んで歩く。

でも、ほんの少しだけ距離が違う。

ミミとハルが並び、サクラが半歩後ろ。

サクラは空を見上げる。

(大丈夫)

恋心は消えない。

でも、それでいい。

 

「ちゃんとやろう」

 

小さくつぶやく。

仕事として。
親友として。
そして、自分として。

――この夜、サクラは“支える側”を選んだ。

でもそれは、弱さじゃない。

強さだった。

(続きは2か月後に)


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※今回のイラスト・シナリオはChatGPTで生成しております。