すがっち探検隊(続)第51話「寂夏」

2026年08月28日

こんにちは、 センチュリー21 TRAD 札幌店のすがっちです!

 

ちょっと前のお話の続き。

「春夏秋冬猫物語(仮)」


第1話「春別」https://www.sapporo-trad.com/blog/blog20250307/
第2話「揺夏」https://www.sapporo-trad.com/blog/blog20260306/
第3話「再夏」https://www.sapporo-trad.com/blog/blog20260320/
第4話「夏呑」https://www.sapporo-trad.com/blog/blog20260403/
第5話「潤夏」https://www.sapporo-trad.com/blog/blog20260501/

 

※このストーリー全体のタイトルは未定で、現時点では「春夏秋冬猫物語(仮)」としておきます。

子供部屋

思い出の家と、それぞれの思い

 

前回、三人で東京の夜を過ごしてから、数週間が経っていた。

あの夜から、ミミは京都へ戻り、再び出版社での忙しい毎日を送っていた。

朝は早く、帰宅する頃にはすっかり夜。

知らない街での一人暮らしにも、少しずつ慣れてきた。

 

けれど――

やっぱり、寂しい。

仕事で失敗した日。

上司に注意された日。

逆に、初めて自分の企画が褒められた日。

 

そんな出来事があるたびに、

 

「今日ね……」

 

と話したくなる相手がいた。

ハル。

そして、サクラ。

 

三人で過ごした大学時代なら、すぐに集まって話せた。

でも今は、京都と東京。

簡単には会えない。

 

ミミは何度もスマートフォンを手に取った。

ハルに連絡しようかな。

サクラに電話しようかな。

そう思いながらも、

 

「みんな忙しいよね……」

 

と、結局スマートフォンを置いてしまう。

 

***

 

そんなある日。

ミミの実家に、サクラがやって来た。

今日は友達としてではない。

ミミの両親から依頼された、実家の売却査定のためだった。

 

「こんにちは。本日はお時間をいただき、ありがとうございます」

 

玄関先で、サクラが深々と頭を下げる。

ミミのお母さんが笑った。

 

「もう、サクラちゃん。そんなにかしこまらなくてもいいのに」

 

「いえ、お仕事ですから」

 

サクラは笑顔で答えた。

 

「今日はきちんと担当者としてお伺いしています」

 

その言葉を聞いて、ミミのお父さんも感心したように頷く。

 

「いやぁ、立派になったな」

 

「ありがとうございます」

 

サクラはもう一度頭を下げた。

 

三毛猫のサクラ。

幼い頃からミミと一緒に育ち、家族同士も昔から仲が良い。

昔なら、この家に来れば、

 

「ミミー! 遊ぼう!」

 

と玄関から勝手に上がっていた。

 

そんなサクラが今は、資料を取り出し、周辺の相場や査定方法を丁寧に説明している。

ミミは、その姿を少し離れたところから見ていた。

 

(……サクラ、すごい)

 

大学を卒業して、まだ数か月。

それなのに、もう立派な社会人に見える。

 

***

 

「では、まずこちらのお部屋から拝見しますね」

 

サクラは手帳を片手に、家の中を一つずつ確認していく。

日当たり。

窓からの眺望。

水回り。

建物の状態。

収納。

庭。

一つ一つ、丁寧にチェックしていく。

懐かしいミミの部屋も。

部屋の隅には、昔使っていた小さな棚が残っていた。

 

「ここで一緒に宿題したよね」

 

「したした」

 

「全然勉強しなかったけど」

 

「サクラが漫画持ってきたからでしょ」

 

二人は顔を見合わせて笑った。

ミミのお母さんも、

 

「二人とも、よくここで遊んでたものね」

 

と懐かしそうに話す。

 

***

 

最後に、庭へ出る。

夏の日差しを浴びた庭を見て、サクラが立ち止まった。

 

「……ここだ」

 

「何が?」

 

「花火」

 

ミミも思い出した。

 

「覚えてる?」

 

「もちろん」

 

小さな頃。

三人で庭に座って、花火をした。

ハルが変な持ち方をして、サクラに怒られた。

ミミが線香花火を落として、三人で大騒ぎした。

最後に三人で空を見上げた。

 

あの頃は、ずっとこのまま一緒だと思っていた。

京都にも東京にも行かない。

仕事もしない。

ずっと三人で遊んでいられる。

そんな気がしていた。

 

「懐かしいね」

 

ミミが言う。

 

「うん」

 

サクラは笑った。

でも、その笑顔の奥には、ほんの少しだけ寂しさがあった。

 

――ハル。

昔から三人で一緒だった。

そして今も、二人ともハルを大切に思っている。

ただ一人。

サクラだけが、誰にも言えない想いを抱えている。

 

***

 

「サクラちゃん」

 

ミミのお父さんが声をかけた。

 

「査定って、こんなに細かく見るものなんだな」

 

「はい。建物だけじゃなくて、周辺の取引事例や土地の状況なども含めて、総合的に見ます」

 

「なるほどなぁ」

 

お母さんも頷く。

 

「本当にしっかりしたわね」

 

「ありがとうございます」

 

サクラは少し照れながら頭を下げた。

 

「まだまだ勉強中ですけどね」

 

「いやいや、十分立派だよ」

 

ミミは、その会話を聞きながらサクラを見つめていた。

 

そして――

胸の奥が、少しだけざわついた。

 

(私も……もっと頑張らなきゃ)

 

サクラは東京で働いている。

ちゃんと仕事をしている。

自分の知識を使って、こうしてミミの家族のために動いている。

 

それに比べて自分は――

京都で、毎日仕事に追われて。

寂しくて。

本当はもっとハルに会いたくて。

もっとサクラに話を聞いてほしくて。

 

「今日は大変だったよ」

 

「上司に怒られたよ」

 

「ちょっと褒められたよ」

 

そんなことを、全部聞いてほしかった。

でも。

 

目の前のサクラは、こんなにも立派に仕事をしている。

ミミは、少しだけ焦った。

 

「……私も、頑張らなきゃ」

 

小さな声でつぶやく。

 

「え?」

 

サクラが振り返る。


「ううん、何でもない」

 

 

ミミは笑った。

 

***

 

査定が終わると、サクラは資料を片付けた。

 

 

「本日はありがとうございました」

 

「こちらこそ、ありがとうね」

 

 

ミミのお母さんがサクラの手を握る。

 

「昔から知ってるサクラちゃんにお願いできて、本当に安心だわ」

 

「ありがとうございます」

 

サクラは嬉しそうに笑った。

 

「大切なお家ですから。できる限り頑張ります」

 

その言葉を聞いて、ミミは少し胸が熱くなった。

 

***

 

サクラが帰ったあと。

ミミは自分の部屋に戻った。

窓から見える景色は、昔と変わらない。

でも、ここで過ごせる時間は、もう長くない。

 

この家が売れれば。

両親と一緒に京都で暮らすことになる。

もう、この部屋に戻ってくることもほとんどなくなる。

ミミはベッドに腰掛け、スマートフォンを手に取った。

ハルの名前を見る。

 

「……ハル」

 

会いたい。

本当は、すごく会いたい。

東京にいるハルに、

 

「寂しいよ」

 

って言いたい。

 

「仕事、うまくいかないよ」

 

って甘えたい。

 

「もっと電話してよ」

 

って言いたい。

 

でも――

ミミはスマートフォンをそっと置いた。

 

「……私も、頑張ろう」

 

京都で、自分の仕事を頑張る。

いつかハルに会ったとき、

 

「私もちゃんと頑張ってるよ」

 

と胸を張って言えるように。

 

***

 

一方、帰り道のサクラ。

駅へ向かう途中、スマートフォンが鳴った。

ミミからのメッセージだった。

 

「今日は本当にありがとう。
サクラにお願いできてよかった。
私も京都で頑張るね!」

 

サクラは立ち止まった。

そして、しばらく画面を見つめる。

 

「……そっか」

 

少し寂しそうに笑う。

本当は――

 

「頑張らなくていいよ」

 

って言いたかった。

 

「寂しかったら電話して」

 

って言いたかった。

 

「もっと私に甘えていいんだよ」

 

って言いたかった。

 

そして。

 

「私も、ハルに会えなくて寂しい」

 

と。

 

でも、それは言えない。

サクラは返信を打った。

 

「うん。私も頑張るから、ミミも無理しすぎないでね。

何かあったら、いつでも連絡して」

 

送信。

画面を閉じる。

そして、空を見上げた。

 

「……ハル」

 

ほんの小さく、名前を呼ぶ。

会いたい。

でも――

 

今は、それでいい。

ミミが笑っていられるなら。

親友が幸せになれるなら。

自分は、親友のそばにいる。

たとえ心の奥が、少し痛くても。

 

***

 

その夜。

京都ではミミが、東京ではサクラが、それぞれ仕事の準備をしていた。

そして東京の別の場所では――

 

ハルもまた、明日の仕事の資料を整理していた。

三匹はそれぞれ別の場所にいる。

けれど、同じ空の下。

 

少しずつ大人になりながら。

少しずつ離れながら。

 

それでも、三人の青春はまだ終わっていなかった。

そして――

 

ミミの家の売却が決まったとき。

三匹の距離は、もう一度大きく動き始めることになる。

 

(続きは2か月後に)


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※今回のシナリオ・イラストはChatGPTで生成しております。